宝石ってどうやって見分けたらいいの?基礎知識をつけて注意しよう|宝石の見分け方★ルビー編

ルビーの見分け方

宝石の多くは還流品と言われる中古です。中古品を買う時、ついつい、これは本物の宝石なのだろうかと不安に思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
特にルビー、サファイア、エメラルドなどの有名な宝石は偽物が作られやすく、また色付きガラスでもパッと見騙されてしまいそうだ、と思っている方もいるかもしれません。

筆者自身、見分け方のコツを知るまでは、ガラスもエメラルドも言われたがままに信じてしまいそうでした。この記事では「宝石」についての基礎的な知識をご紹介するとともに、具体的にどうやって偽物ルビーを見分けることができるのかの方法をご紹介していきます。

宝石についての基礎知識

そもそも宝石とは?

宝石とは美しさ、耐久性、希少性を兼ね備えたもので、石自体の魅力や大衆での人気、神話・伝承によってより価値を持ちます。宝石は大きく分けると実は二つあって、一つは「色石」と呼ばれるもの。これはダイヤモンドを除くすべての宝石を指します。
ダイヤモンドはカット工程から特別なので、一つだけ別の枠で扱われます。

宝石の美しさを判断する指標

宝石の美しさを判断するには、以下の5つの指標から判断していきます。これらの宝石の基礎知識が偽物を見分ける際の一つの指標になります。
・カットと形の種類
・色
・透明度
・光沢
・光学効果
(キャッツアイに見られるシャトヤンシー効果など)

カットの形と種類

カットとは「ダイヤモンドのラウンドブリリアントカット」などに代表して知られている、宝石につけられる輪郭の形スタイルのことです。
一般的に、透明で硬度(表面の傷つきにくさ)の高い宝石は宝石にたくさんの平面をつけカットされ、それはファセットカットと呼ばれます。
また、不透明だったり硬度が低い宝石は、カボションカットと言われる平で未研磨の裏面とドーム上に研磨された上部の表面からなるカットをされます。このカボションカットはスタールビーやクリソベリルキャッツアイなどの、「猫の目(紗とヤンシー)」と呼ばれる光学効果を引き出したい時にも利用されます。

色は宝石ごとに好まれる色は異なり、その宝石において人気の高い色が高い価値を持ちます。

透明度

透明度は重要な要素で、透明、半透明、不透明に分類されます。透明の定義は光を通過させ、背後の物体や文書が透けて見える状態を指します。
半透明は、光を一部通過させ、背後の物体や文書は見えたとしても不明瞭なものを指します。不透明は、光を一切通過させず、背後の物体や文書が見えないものを指します。

宝石素材はクラルティ=どれだけインクルージョンを含んでいないか、と色の濃さによって透明度が異なる場合があります。例えば、質の劣るルビーはインクルージョンが多くクラルティが低いため、透明度は低くなります。

光沢

光沢も宝石の重要な要素の一つで、宝石表面からの光の反射を意味します。光沢は宝石の屈折率に関係し、宝石の研磨状態や硬度による影響も受けます。学術的な世界では、宝石の光沢を主に以下の5つに分けて判別しています。

金属光沢:研磨した金や銀のような光沢
金剛光沢:非常に輝き反射する。ほとんど鏡のような光沢
亜金剛光沢:輝く艶々した光沢
強いガラス光沢:艶々した光沢の、よく研磨されたガラスかそれ以上
ガラス光沢:普通の窓やガラス類の反射に見られる光沢

例えば、ダイヤモンドは金剛光沢を持っており、ルビーやサファイアは強いガラス光沢を持ち、トルマリンやトパーズはガラス光沢を持ちます。

光学効果

光学効果がない石もありますし、光学効果にも様々な種類があります。
例えば覚えておくと役に立つ光学効果としてはダイヤモンドの「ファイア」(=透明でファセットがある宝石をランプや太陽光の下で回転させると見られる色の煌めき)は、ダイヤモンドの美しさの一つとして語られます。

また、スタールビーやスターサファイアも「アステリズム」(=二つの、またはそれ以上に交差する光の帯が現れること)という光学効果がルビーやサファイアに現れているものです。
他には、ラブラドライトには「イリデッセンス」(=光が通過する時、非常に薄いそうやクラックの表面などに光が反射・あるいは回折された時に見られる虹色の色彩効果)という光学効果で虹色が見えています。

*干渉:位相の異なる光の波同士が相殺し、位相の同じ光の波同士が強めあう現象
*回折:光が細かい微粒子から反射するときや、細いスリットを通った時に僅かに広がる現象のこと

その他

他にも「分散」は宝石を特徴づけるものの一つです。
分散とは白色光がプリズムなど光を分ける性質のある媒体を通過したときに、赤から紫に色が分かれることを言います。正確には赤い色の光で測定した屈折率と、紫色の光で測定した屈折率の差になります。これはどういうことかというと、分散が高い宝石をファセットカットするとより「色々な色にキラキラ」しているように見えるのです。例えば、キラキラといえばダイヤモンドのダイヤモンドも分散が高い宝石の一つです。

他にも合成モアッサナイトやキュービックジルコニア、鉛ガラスなどの人工宝石も高い分散を持ちます。
天然宝石の中では、デマントイドガーネットという緑色のガーネットの一種や、ジルコン(キュービックジルコニアとは違います)も高い分散を持っています。

どうやって偽物石を見分けるの?

ルビーに類似している石とは?

偽物石を見分けるには、まず商業的にどのような石を偽物として売る可能性があるかを知る必要があります。
今回はルビーの偽物を見分けるのがテーマなので、ルビーについて考えていきましょう。ルビーの偽物として使われる可能性があるのは例えば以下のようなものが思い付きます。

合成ルビー
合成ルビーとは人工で作られた合成石です。天然ルビーと比べると非常に安価です。
合成ルビーときちんと表示して、天然ルビーの代替品として売っている分には問題がありません。天然ルビーかのように見せかけて売っている場合に問題があります。

張り合わせ石
宝石やガラスを張り合わせて作った模造石です。非常に安価です。

様々な処理を施した天然ルビー
これは偽物ではなく、天然石ですが価値が非常に落ちる場合です。
処理を明記し、その処理による変化を消費者が理解している場合は問題がありません。処理を隠して販売している場合は問題です。

赤いガラス
そもそもルビーや石ですらなく、色味の似ているガラスが該当するでしょう。

ルビーに類似している石を見分けるポイント

では、ひとつづつどのようなものなのか解説していきましょう。敵を倒すには敵を知ること。偽物を見分けるには、まず偽物を知ること!

合成ルビー
合成ルビーは、合成であること隠されるともっとも見分けにくい石の一つです。まず合成ルビーと一口に言っても、様々な合成方法があります。ここでは、市場に出回っている合成ルビーには「ベルヌイ火炎熔融法」と「フラックス法」があります。それぞれどのように作られる、どのような特徴で見抜けるのでしょうか?

<ベルヌイ火炎熔融法>

原料の粉末を非常に高温な酸水素炎にとおし、溶融させたものを結晶にする手法。

ルビーを作る場合には酸化アルミニウムと着色元素となる酸化クロムを2000℃にして、2-3時間結晶化させることで完成します。

見抜くには10倍ルーペや顕微鏡での観察が最適です。

合成ルビーには球形や尾を持った形の気泡がインクルージョンとして内包されることがあり、これは天然ルピーには見られません。

また、気泡集団やカーブラインと呼ばれる天然にはないカーブした線が見られることもあり、こちらが見えた場合も天然ではなくベルヌイ合成ルビーであるとわかります。

見分けポイント!

✔︎球形や尾を持った気泡、気泡集団が見られる

✔︎カーブラインと呼ばれるカーブしたラインが見られる

+α 豆知識

ルビーに「アステリズム」という光学効果を加えたスタールビーも合成で作られます。

スタールビーは酸化アルミニウムに0.1-0.3%の酸化チタンを加えることで作られます。

また結晶化した後に、1300℃で24時間アーニリング(加熱処理)を行うことで完成します。

天然のスタールビーと違って、スターの線が直線的でシャープでありくっきりしているので、見分けやすいです。

<フラックス合成ルビー>

フラックス合成ルビーは1300℃のフラックス(溶媒)に酸化アルミニウムを入れて、タネ結晶の上で結晶化させるものです。

これはプラチナやグラファイトで作られたるつぼを使うため、それらの素材が宝石内で見られることもあります。

フラックス合成ルビーも10倍ルーペや顕微鏡でインクルージョン(内包物)を確認すれば天然と見分けがつきます。

フラックス合成ルビーに見られて、天然ルビーには見られないのは以下のようなインクルージョンです。

見分けポイント!

✔︎ プラチナの薄い薄片

✔︎  ねじれたベールのように見えるモヤモヤとしたインクルージョン

✔︎ フラックスに満たされたキャビティ(空洞)

*これらの三つは、同じ方法で作られたエメラルドにも見られます。

✔︎ フラックスで満たされた割れ目

✔︎ 飛び散ったペンキのようなインクルージョン

✔︎ 彗星のように尾をひくインクルージョン

✔︎ 橙色や白色のフラックス(溶媒、飛び散った色のように見える)

張り合わせ石

次に張り合わせ石について説明しましょう。

張り合わせ石とは薄い天然の宝石と合成宝石やガラスを貼り合わせて作られた模造石のことです。

例えば、天然グリーンサファイアを表面に薄くはり、その下に合成ルビーを貼り付けた「コランダム・ダブレット」というものや、無色の宝石素材に有色の層を挟み込んだ「スーデ宝石」、赤いアルマンディンガーネットを氷面にはり有色のガラスを融着させた「ガーネット・トッブド・ダブレット(GTD)」(*今は少ない)などがあります。

(*ちなみに、張り合わせ宝石は目の錯覚を利用しおり、ルビー以外にもエメラルド用も作れます。ルビーよりエメラルドの方が高いため、エメラルドの模造石の方が造られがちです)

これらを看破する上で有効なのは大きく分けて三つ。

ひとつ目は、最初の基礎知識で解説した「光沢」です。

光沢は宝石の屈折率や硬度に影響を受けて変わり、屈折率や硬度は宝石それぞれが特有に持っています。(*重なっている性質の宝石もあります)

特にGTDは光沢が上のアルマンディンがーネットと下のガラスでは異なるため、光沢の違いから違和感を持つことができます。

またガラスは硬度が低いので摩耗しやすく、アルマンディンガーネットは硬度が高く傷つきにくいです。そのため、上部は艶々しているのに、下部は摩耗しているなど違和感を見つけることができるでしょう。

次に、インクルージョンの観察がここでも重要になってきます。

合成ルビーの章で説明したような合成ルビー特有のインクルージョンが下部に見えて、上部には天然サファイアのインクルージョンが見えるなど、チグハグしたインクルージョンが観察できると、怪しいと思うことができます。

また接着面や融着面に接着する際に入った気泡が観察できることもあります。

他にも水につけて目の錯覚を排除して観察することで、張り合わせているままの姿を観察でき、決定的な見分け型にもなります。

*GTDは白い髪の上にファセット面を下に置くと、レッドトリムと呼ばれる縁だけ赤く見えるため、特にエメラルドなど色の違う宝石の時に模造石と気づくことができます。

々な処理を施した天然ルビー

処理された天然ルビーを偽物とは呼ばないでしょうが、無処理の天然ルビーだと信じて買った人にとっては偽物も同然です。しかし、処理と一口に言っても、一般的で価値をあまり落とさない処理(加熱)から、耐久性に問題が出るため価値が低くなる処理(ガラス含浸)まで、様々な種類があります。

ここでは、まずルビーに施される可能性のある処理とその価値への影響を一覧にしました。

処理 定義 備考 どうなる? 見抜き方
加熱 外観を変えるために
熱を加える処理  
耐久性に影響はなく、価値も下がりにくい。
一般的に行われる。
透明度が上がる
色の濃淡を調整する
望ましい光学効果を作る
・インクルージョンを観察
・放射状に広がる圧力割れ
・白く曇った結晶(スノーボール)
・崩壊した針状インクルージョン(崩壊したシルク)
含浸・充填 素材に他の物質を染み込ま
せたり、入れたりする処理
オイル含浸 色のついたオイルを含浸。
色が抜けることがあり、価値↓
望ましい色がつく ・10倍ルーペで観察
・染料のいろだまりが見られる
ガラス含浸 フラックス合成の際にフラクチャー
内に結果としてガラス質の残留物が残る
合成の副産物 ・光を当てて観察
・フラクチャー(宝石内部の割れ目)
に低い光沢が見える
鉛ガラス充填 鉛ガラスにルビーをつけて
充填する。よく行われる処理。価値↓↓
質の悪いルビーの透明度
を上げ、色をよくする
・10倍ルーペで観察
・気泡 や光を当てるとブルーや
オレンジのフラッシュが見える
・光沢が周りと違う
拡散 外部から着色元素を加えて
色や光学効果を変える処理
酸化アルミニウムやスラリーと呼ばれる
混合物、色をつけるクロムで
石を覆い数日間加熱する。価値↓
色を良くする ・ジヨードメタンという屈折率の高い液体
やベビーオイルに入れると、ファセットエッジ
(宝石の角)に集まって色がついている
・天然には直線的に色の帯が見える


④赤いガラス
最後に赤いガラスとルビーを見分ける方法をご説明します。まず、一番は観察です。
ガラスは光沢がガラス光沢で低く、硬度も1〜10の中の5と低いため表面に傷がつきやすいです。しかしルビーは強いガラス光沢でキラキラとしており、硬度も9と非常にかたく傷がつきにくいです。ファセット面の傷や、ファセットエッジ(宝石の角)が摩耗がひどい場合は、「これはガラスではないかな?」と疑うことができます。

他にも、ガラスには気泡や脈理(ガラスが流れた跡)が観察できます。10倍ルーペで石の中を良く見て、気泡が見えたらそれが天然ルビーであることはあり得ません。
さらに、少しだけ専門的な器具、と言っても数千円で買えるような器具を使うことで、もっと簡単に確実にルビーとガラスを見分けることができます。

携帯型分光器
(写真)    
光を宝石の真下から当てて、宝石を投下した光を分光器に入れます。
万華鏡を見るように覗き込んで、そこに表示される色のバンドを見て見ましょう。
セレンという物質で赤く着色されているほとんどのガラスは、
赤い帯だけが残り他は暗くなっています。
一方でルビーは赤い帯と青〜紫色の帯が残り、赤い帯にははっきりとした細い
黒いラインが右の方に現れます(光が強いと、白い明るいラインになります)。
そのように明確にガラスとルビーで異なる色が見えます。
偏光器 偏光器は二枚のフィルターを垂直に交差させて設置した機械です。
その二つのフィルターの間に宝石をおいて、下から白い光(拡散光)
を当てて、宝石をくるくると回します。  
ルビーの場合は、一回転する間に4回明暗を繰り返します。
一方でガラスは多くの場合、黒い細い模様がうにゃうにゃとのたうつように見えます。
紫外線
(ブラックライト)
全てのルビーが確実に光るわけではありませんが、ルビーにブラックライトを
当てるとピンク色に蛍光します。 ガラスは蛍光しません。
CCF
(チェルシーカラーフィルター)
濃い赤色と薄緑の光のみを投下する特殊なフィルター。
ガラスは褐色や暗赤色の一方で、ルビーは鮮赤色に見えます。

まめ知識

私たちが使える機械ではありませんが、研究室にある機器を使って判別の難しい合成ルビーと天然ルビーを見分けたり、ルビーにされている処理を看破することもできます。

・X線
骨折の時などにとるX線でルビーを撮影すると、鉛ガラス充填をされている場合には鉛ガラスが映るので見破ることができます。

・紫外分光計
紫外線と可視光の両方について、その宝石がどのような色を吸収しているかをみる装置で、その吸収パターンからどの宝石種なのか、合成なのかコランダムなのかを調べることができます。

・XRF
X線を照射しその後宝石が再放出したX線を観察することで、構成元素を見てどの宝石なのか、不純物元素を見てどこの産地なのかを判別することができます。

・ラマン分光計
分子を同定することで、染料やオイルが使われているのか、何が使われているのかを見ることができます。他にも、宝石内部に含まれている別の結晶のインクルージョンが何の結晶なのかを調べたり、合成ダイヤモンドを見破ることもできます。

まとめ

宝石の基礎知識と、偽物ルビーの見分け方について見てきました。

研究室などにある高度な機器を使わなくとも、意外と偽物か本物かを見極める手段はあります。実際に信頼性の高い鑑別をするには、より深い知識と経験が必要ですが、ちょっと海外旅行中に気になった時や、オークションで買って見た石など、自分で持っている石がルビーなのかどうか知りたい時の指標になれば幸いです。

記事執筆者:Cotubee編集部

Cotubee編集部は様々なメンバーから成り立つメディアグループです。
会社経営者、様々な業界のコンサルタントなど事業経営の最先端で活躍するメンバーから、ヨガインストラクターやサロンオーナーなどの個人事業主業や、ママ業とライターを両立するメンバーなど、幅広い人材が集まるライティングチームのため、多様なトピックについてユーザー目線と事業目線の両視点からの理解によりメリット・デメリットを明確にする記事を執筆。

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